10月30日に開催された,埼玉県立岩槻商業高等学校の塾対象説明会にお邪魔してきた。
日にちを間違えて記憶していて,29日にも学校へうかがったのはここだけの話。w
文化祭の代休で校舎は真っ暗だった。

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岩槻商業高校は東武アーバンパークライン(野田線ね!w)岩槻駅から徒歩15分,元荒川沿いの岩槻城址公園の近くにある県立高校で,その名の通り商業科と,情報処理科を有する。

商業科だけではなく,工業や農業などの専門学科・専門高校を選ぶ基準は何だろうか。
多くは,「大学等への進学ではなく就職を希望しているから,資格が取れた方が良い」という理由なのではないだろうか。

岩槻商業では,ビジネス基礎,マーケティング,ビジネス法規,簿記や情報処理などの商業科目に加え,商業科では財務会計,情報処理科ではプログラミングなどの授業をしている。
タブレット端末も一人1台渡っている(iPadを各自購入)が,パソコンを利用する授業数が多いようだ。
藤森雅彦校長は,
「今,パソコンがない会社は殆ど存在しないので,パソコンの扱いに慣れておいた方が絶対に良い。」
と仰っていた。
以前,ニュースにもなっていたと思うが,大学生がパソコン(キーボード)が使えないのでスマホでレポートを書いている,という話があった。
そのときに,社会人になったらどうするつもりなんだろうな,と感じた記憶があるが,商業高校では社会に出て必要なスキルを身につけることができる。

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レベル別にキーボード入力の練習をしていた。(商業科1年)
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机の配置の違うPCルーム。いろいろな配置の会社があるから,という理由だそう。
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手元に影を作りにくい蛍光灯が設置されていた。
因みに商業高校は優先的に最新のパソコンに代わるとのこと。羨ましい。


ビジネス関連の授業では身だしなみも含めたビジネスマナーや文書作成,メールの書き方などの練習も行っている。
ビジネスメール!
ウチの卒業生の話だが,接客系の社会人になって数年経つが「未だにお客様とのメールの遣り取りに慣れない」と話していた。
その卒業生は英語を使ってバリバリ仕事をしていて「英語でのメールの遣り取り問題ないが,時々ある日本人のお客様とのメールは緊張する。」と言っていた。
社会に出てからは,友だちとのLINEの遣り取りのようなわけにはいかない。
特に日本語には敬語という厄介なヤツもある。
ビジネスに役に立つ言葉の使い方を学べるのは商業高校の強みの一つだと思う。
校舎内のあちこちに『入室のときは身だしなみを整えるように』と貼り出されており,生徒さんたちは制服をびしっと着用していた。
妙に着崩していたり,だらしなくなっていたりという生徒さんは見受けられなかった。
所謂『整容検査』も厳しそうだ。

そして面白いのはこちらの教場。
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この部屋は,ちょうど中央あたりで分断(物理的にではなく精神的に)されていて,手前が東京の会社,奥が大阪の会社,となっている。
どちらも数社に分かれていて,その会社間で模擬取引の授業を行っている。
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こちらは東京側。
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株式会社東京第一物産という体のブース。

つまり,会社ごっこ・取引ごっこなわけだが,ビジネス文書の遣り取りだけでなく,手形を出したり小切手を切ったり金銭のをやり取りしたり,本格的な取引を学ぶことができる。
デスクに電話があるのも面白い。電話での話し方の練習もできるわけだ。
最近の子どもたちは,他者(ココでは誰だか分からない相手という意味での)との電話での遣り取りに恐怖さえ感じるのだという。
そういう練習も授業として受けることができる。
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机の上には業務用の電話がある。これで他社との遣り取りの練習をする。
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教室の入り口には何とタイムカードもある!面白い。

商業高校と聞くと,真っ先に思いつくのは『簿記』で,もちろん簿記の資格もしっかりと取れるのだがそれだけではなく,社会に出たときに身についていなければならないビジネスのスキルをここまで学ぶことができるとは!


岩槻商業高校の近隣には,他に浦和商業高校,大宮商業高校がある。
ジュクセツに参加されていた教育ジャーナリストの梅野弘之先生が,「浦和商業や大宮商業と岩槻商業との違いは?」と質問されていた。
藤森校長は即座に,「インターンシップがあることだ。」とお答えになった。
他の2校には,どうやらインターンシップはないらしい。
インターンシップがあることで,自分の向き不向きが分かったり,やりたい仕事に気づくことができたり,就職先や職種とのミスマッチを減らすことができるそうだ。
就職してみたけどココじゃなかった,コレじゃなかった,みたいなのが起きにくくなる。
生徒さんたちにマッチした就職先に進むことができるのは,商業高校ならではだと思う。

と,ここまで書くと,就職に向かう話ばかりだが,今年度の高校3年生の進路調査では,専門学校も含めた進学が53%,就職が47%となっている。
大学は商学部だけでなく経済学部などへの進学者もいる。もちろん専門学校も。
進路指導部の岡村教諭はこんなことを仰っていた。
「生徒が目標もなく大学へ進学することは本当に幸せなのか。生徒が希望の進路に進むことが本当の幸せなのではないか。」

高校を出てから就職するのか大学や専門学校へ進学するのか,まだ決まっていないという生徒さんたちは,一度,商業高校・商業科を視野に入れてのいいかもしれない。


そう言えば。
先日うかがった,とある通信制の私立高校で校長先生がこんなことを仰っていた。
「手に職を,と考えて工業科・工業高校に進んで「数学ついていけない。そう言えば苦手だったわ。」となってウチに編入してくる生徒が多い。」
初めに書いたが「就職を希望しているから資格が取れそうな専門学科」という選択を,安易にするのは危険だ。
確かに資格は取れるだろうが,適性が合致していなければ大変な思いをする。
しっかりと学校や授業の中身を吟味し,決定した方がいい。
因みに,数学をたくさん使いそうな商業科ですが。
数学力はそれほど必要じゃないそうです!w


学校の先生や我々塾関係者で,商業科(も含めた専門科・専門高校)出身者はほぼいない。
また,私立で商業科のある学校はあるが,説明会ではほとんど商業科の話は挙がらない。
そのため,初めて商業科のお話をじっくり聞くことができ,新しい発見が多くあった。
大変良い機会をいただくことができた。
来年はもっと,専門学科・専門高校の説明会に参加して,情報の幅を広げていきたいと思う。


それにしても。
生徒さんたちの幸せを追い求める,熱い思いを持った先生方ばかりだったなあ。